ギターの低音弦の限られた音域は、声部の正確さの点でギタリストに譲歩を強いて、ありとあらゆるポジションで指を伸ばしたり抑えたり飛び越えたりする、卓越した技巧を達成するように駆り立てます。1E、A、およびdを除くすべての低音は抑えなくてはなりませんから、対位法における本物の反進行を長時間にわたって切れ目なく保つことは、不可能です。これは指板上で上から下へと、曲芸的に指を動かしても解決しません。そのため聴衆は、独奏より、この弱点を補うギターデュオの演奏から、しばしば多くの満足感を得ます。
バスに低音Dおよび/またはBナチュラルが追加されたE短調ギターは、疑いもなくより良く装備されています。しかし、この目的で8本以上の弦が装着されたギターのほとんどは、視覚的な優美さに劣るだけでなく、しばしば周囲の共鳴が多大であり、望まれない共鳴を絶えず止める必要性が、演奏家の注意をそらします。この現象はリュート楽器でも起きますが、魂柱が連係する表板と裏板の不在下では、10弦までのその共鳴自己振動は共振し得ないので、ギターの場合ほど憂慮すべき事態にはなりません。
このような審美的懸念に加えて、ギターのより低音域への有意義な延長を制限するのは、共鳴板の構造と言えます。暗い音色のために、Dより低いあらゆる音は、デスカントと混じり合うことが妨げられ、それらをより明るくしたいのならば、駆動領域(音楕円)を縮小させ、高音弦を「古典派」ピリオドギターの音に戻さなくてはなりません。
1 スパニッシュギターでバロックリュートのレパートリーを演奏するギタリストの最大の障害となるのは、Eより低い弦の欠如ではなく、低音GおよびF弦がないことです。それに対処するために、オーストリアの音楽学者キーゼベッターは、1831年に、AとEの間にGとF弦を追加して、下1点オクターブAまで延長する調弦を提案しています。